旅の思い出20 ~沖縄の民家の美~

 先月、2年ぶりに沖縄へ。

 国指定重要文化財の中村家住宅を5年ぶりに訪れました。沖縄の戦前の民家の特徴を色濃く残しています。母屋は江戸時代後期、その他の部分(離れ、高倉、台所、動物の飼育小屋)は明治時代に建築されています。(戦争の被害を奇跡的に受けることなく保存されています)厚い石垣と正面を避ける壁(ひんぷん)、その敷地に入ると開放的な佇まいの母屋、赤瓦、チャーギーと呼ばれる北部で取れる木で縁側の深い庇を支える構造、ねずみ返しのある高倉等。強い台風や暑い日差しといった気候風土の中で快適な生活を送れるように風の抜けやスムーズな生活動線が屋内外に繋がっています。暑い石垣の内側には強風を防ぐ防風林としてのフクギが立ち並んでいます。それらは日差しを適度に和らげる効果も伺えます。自然と人が適度に調和しながら、馴染んている風景に美しさを感じました。「集落の教え100」(著者:原 広司)という本を学生の頃、読みましたが、それを思い出しました。一般の方でも楽しめる本なので興味がある方はお薦めしたいと思います。

赤瓦の屋根の佇まい
琉球石灰岩の石垣とフクギ
石垣の入口の正面に見えるヒンプン。

母屋(ウフヤ)には本土で見られる玄関+土間的な組合せがなく、開口部の大きな縁側から出入りするのが一般的です。土間はありますが、比較的奥の方にあることが多いように思います。
縁側は主だった部屋に面しているため、家の主も客人も、中庭(ナー)から家の各部屋に上がれるようになっています。本土の場合は民家でも主の部屋は奥の方にあることが多いように思います。母屋の縁側に大きく張り出す庇は「雨端(アマハジ)」と呼ばれます。南国特有の厳しい直射日光や雨が直接屋内に入り込むのを防ぐ働きがあり、沖縄特有の豪雨が降っても雨がしのぎやすい作りになっています。中庭(ナー)と屋内をはっきり分離するのではなく、ゆるやかに繋いでいるのが特徴と言えます。