「図書館」R5.1級建築士2次試験(製図課題)

 

(写真:洲本図書館 有限会社鬼頭梓建築設計事務所/有限会社佐田祐一建築設計研究所)撮影:中尾

 今年(令和5年度)の1級建築士2次試験(製図課題)は「図書館」ということで、今年も本業の建築設計の仕事の傍ら、建築士の資格取得を目指す学校で1級建築士の講師業をしていました。令和元年の「美術館の分館」、令和2年の「高齢者介護施設」令和3年の「集合住宅」令和4年の「事務所ビル」に続き、5年目ということで、最近の課題の傾向も色々感じることがありました。
 今教えている資格の学校で私自身もお世話になったこともあり、今は教える側で受験生の立場に立って製図の描き方(手書き)を教えています。といっても私が社会に出た1999年は既にパソコンでほとんどの図面を描くのが主流でしたので、手書きの製図図面ですべての実施図面を描いていたというわけではありませんでした。学生の時に4年間ある程度手書きで製図を書いた経験と、私自身が1級の試験で経験した早く綺麗に図面を描くコツを生徒の皆様には時々図面返却する時にアドバイスする程度ですが、指導させて頂きました。全く手書きで書いたことがない1年目の方を担当することが私の場合多いので、受験生の各図面の様子を見ながら、手順等も含めて教えることがありました。一次試験を通過した1年目の生徒の方は2か月半で、6時間半以内の試験時間で建築物(2800㎡~3500㎡が平均的な試験課題面積)の製図がプランニングと記述問題も含めて完成できるようになる必要があります。例えば、シャーペンの芯の濃さ(HB、2B)の違いで(6時間半の長時間の製図試験では)疲労度が変わることや、線のメリハリで図面の見やすさが格段に変わる、といったことなど。表現のコツ、課題の読解力(読取り、間違いチェックを含め)、基準法の法的な理解力、判断能力が解答案で試験結果の明暗を分けるので、多くの要求(記憶ができる量を超える要望の数と条件がでますので、メモをする、チェックをする等)を漏れなく満たした解答案が受験生には求められるのです。私の講師としての役割は、住宅設計や工事の関係のお仕事のみをされている方(または職場の関係で別の仕事をされている方)が、通常、なかなか経験できない規模の大きな建築の設計で理解出来ていないと思われる回答をしている受験生の方に、正しい一般的な知識を伝えることだと思っています。例えば、地層や地盤の種類により地盤改良の方法を変えることや、省エネ設計、構造計画、建築設備(空調、給排水、電気設備、消防設備等)等の知識や対処法、バリアフリー法などで決められている階段やスロープの勾配、地下駐車場等の計画(車の車路の幅、勾配、天井の高さ、避難経路等の基準適合)、屋内外の避難階段の計画等。多様な人々が利用する建築物を今の時代(SGDsの時代)の要求に設計製図試験で対応できる能力をアピールしないといけませんので、受験生の方には2か月半の間に合計で毎年15課題程度の製図と記述問題(試験にはA3用紙に記述や詳細図等のイラストを描く問題(大体6問〜8問くらい)もありますので)それと、各自で自宅学習として、自宅で何回か描いてくる指導をしています。(学校では最低合計で30枚描く目標ですが、経験上、50枚くらいは描くことを私は最初の授業で推奨しています)お仕事の関係で、自宅で自習ができない方もいらっしゃいますが、そんな方は学校の開放教室で勉強するなど、限られた時間と環境で受験準備をしている方が殆どかと思います。そんなマラソンのようなタフな試験が1級建築士の2次試験(製図試験)なのです。(今から考えたらよくやったなと今でも思いますが)今、一緒に教えて下さっているT先生が私を指導してくださったご縁もあり、今の資格の学校で講師をさせて頂いていますが、毎年、初心に帰れる良い機会のように私は感じています。明日(天候は曇り時々小雨のようですが)の試験がここ数ヶ月、頑張ってきた受験生の皆様にとって実りある1日となることを講師の一人として願っています。いつか試験に合格した受験生の方が素晴らしい建築やもしかしたら図書館等も設計する日が来るかもしれません。(写真は以前、視察した私の好きな図書館の写真です。)そう考えると次の世代の建築士の登竜門と言えるかもしれませんが、明日、試験会場の大学で最後にエールを贈りたいとお思っています。みんな、頑張れ! ・・・・・つづく。


(写真:洲本図書館 有限会社鬼頭梓建築設計事務所/有限会社佐田祐一建築設計研究所)

撮影:中尾