旅の思い出 vo.l 22 ~建築を巡る旅 その2 岐阜の建築を巡る~

名古屋市から電車で40分という距離に岐阜市があります。愛知に来たのですがこの機会に近くの岐阜市の有名建築も訪れました。

岐阜といえば、まず外せない最近の現代建築としては「みんなの森 ぎふメディアコスモス」(2015竣工:図書館)(設計:伊藤豊雄氏)ではないでしょうか。図書館はこの建物の2階部分にありますが、特徴的なのは屋根を覆う岐阜県産桧(東農ヒノキ)の板を層状に編んで作られたファブリック(織物)のように加工された構造になります。1FはRC造、2階は鉄骨造ですが、屋根部分にこの積層された天井がとても心地よい雰囲気を作り出しています。

木材は人の心をリラックスさせてくれる“フィトンチッド”という香り(消臭効果・浄化作用・精神安定効果等)があるので、本をリラックスして読むことができます。

図書館で目立つのは傘のようなシェルが釣り下がっている部分かと思いますが、この下には閲覧用のサークル上の机、児童図書の閲覧席、キッズコーナー等、大人のための寛いだ閲覧スペース等、様々なエリアでゾーンニングされています。基本的にワンルームの図書館(お話コーナー・トイレ・収納等の小部屋以外)でバリアフリーとなっています。専門的な視点では、500㎡以内ごとの排煙区画(排煙垂れ壁)が見当たらないので、避難安全検証法で基本的には設計されているのではないかと思いました。

平面的には2000年に完成した仙台市の「せんだいメディアデーク」(設計:伊藤豊雄氏)に似ているところがありますが、違いはメディアデークが、サークルの部分がチューブ状の構造(EV・空調・設備スペース)だったのに対して、今回は〇の部分が人が集う空間であり、中央の天窓から自然光を日傘のように和らげる役割+排煙・換気窓機能が設けらえていたのが特徴的でした。

天窓(採光・排煙・換気窓)部分

図書館の間取り(フロアーマップ)

グーグルマップで上空写真を確認すると天窓の様子から平面構成が感じ取られる形状にもなっており、屋根にはソーラーパネルらしきものも確認することができ、CO2やエネルギーについても考慮された建物であることがよくわかります。

 図書館の書庫も以前、伊藤氏の講演会で聴いた通り、プレキャストコンクリートで骨組みが作られた書庫がありました。(燃えにくいもの、ローコストで作るように役場の建築指導課から要望がたそうで、伊藤氏はプレキャストコンクリートの骨組みを持つ書庫を作ることで、対応したとのこと。(実際はコストはある程度かかったかと思いますが、中途半端な既製品を入れるよりも良い出来だと思いました。角部はアールになっていて、怪我をしないように危険防止にも配慮されていました。)

 昔伊藤氏が「東京遊牧少女のパオ」(1985)というタイトルで展示作品を作られましたが、その拡大版のような建築でした。

 メディアコスモスの近くにいる岐阜市民の方はとても豊かな空間をで本を読めるので、きっといい影響を受け、また、建築についても興味を持つ若い世代も多く出るでしょう。いい建築が社会を豊かにするとても良い実例ではないかと思いました・・・つづく。

寛いだ大人の図書閲覧スペース

建物ファサード(茶色い壁部分は鉄板の耐力壁+鉄骨の格子状の柱でした。格子部分に意匠としての板材が表面に設けられ、木の温かみのあるファサードとなっていました。)

2015年竣工といことで、この年は様々なプロセスを経て、台中の台中国家歌劇院(オペラハウス)も台湾で10年の歳月を経て、完成した年なので、伊藤氏にとって、記念の年だったのではないかと思っています。建築学科のある大学がない愛媛に世界的な建築家である伊藤豊雄氏のミュージアムが誕生したことは奇跡的なことなので地元の人にもっと建築について今日もを持ってもらえたらと思い、今回、訪問してみました。(雑誌では見ていましたが、訪れると、想像以上に素晴らしい建築でした。今回の視察では一番感動した建築でした。)(伊藤豊雄氏はRIBAゴールドメダル、プリツカー賞等、多数の国際的な受賞歴を持つ世界的にも評価が高い建築家の一人です)