レンガ造の改修建物の視察

建築研究会で先日、兵庫県洲本市の旧鐘紡洲本工場を訪れた。(鬼頭梓建築設計事務所・佐田祐一建築設計研究所により平成10年(1998)に改修設計)改修後は洲本市立洲本図書館となる。(雑誌で見ていたが、実際に見るのは初めて。)

研究会のメンバーの白方さんがレンガの研究の為、今回の視察の一つとして見てみたいとのことでドライブがてら、訪れる。既存のレンガ倉庫の壁を後ろ側からRC造、鉄骨造等の新規の構造体や新しい建物で補強、周囲の外観は極力保ちつつ、図書館や店舗、会議等、コミュニティースペースとして生まれ変わっていました。

鉄骨造の建物で補強された工場のレンガ壁
建物の構造でレンガ壁の倒れ止めとしている。

周辺の後から整備されたと思われる比較的新しい医療関係の建物、スーパーなどもレンガのトーンや素材を意識した景観に配慮した色彩計画となっていて、この改修工事が町の秩序を形成しているきっかけになっているようでした。町の歴史を象徴する古いコンテキストを有効に活用した事例で、類似の事例としては、横浜や弘前のレンガ倉庫の改修(田根剛氏改修)などでも昔のレンガを活用してまちづくりが行われています。町の遺産をまちづくりに活かした好事例ではないでしょうか。これは専門的なコンサルタントと市役所などの協力、多くの人々が、この改修計画に関わっているからこそこれらの景観づくりまでの流れが出来上がっていると感じたのは視察仲間の皆さんも同じようでした。

別棟の店舗内の様子。(木の骨組みは当初のまま、一部、骨組みは雰囲気を壊さない程度で金物で補強されている)

地域の誇りになるような改修が私の住む愛媛でも行われるときに是非参考にして頂きたい事例でした。研究会のメンバーの白方さんに皆、感謝した1日でした。白方さん、ありがとうございました。レンガを見ながら、2年くらい前に見た香川のNAGARE STUDIOや13年くらい前に見たソウルの金壽根(キムスグン)氏による京東教会等も思い出しました。

昼食をとったレストランの入口。
レストランの内部(白いペンキでレンガを塗り、柔らかな雰囲気そしている。ブロックはイギリス積み)

何事も気になる建物は実際に見てみたいと思っています。レンガは現在は日本では耐震的には耐力不足になりがちですが、他の構造体による補強でその味わいと歴史性を後世に引き継ぐことができる良い事例だと思いました。このような改修は地域に暮らす人々のアイデンティティや誇り、物を大事にする考え方を育むきっかけになるように思います。・・・つづく。

新しい、鉄骨のテナントビルとブリッジでつながり、回遊性を高めている。

以前紹介したロンドンのConran Roche 改修した建物を思い出す。

https://atelierbau.exblog.jp/29657802/

建物の裏側でも中庭を望みながら、縁側で本が読めるようになっていた。