House with a Piano room 2022

松山市内に計画されたピアノ室のある家の設計。お子様が音漏れを気にせずにピアノを思う存分練習できるピアノ室と家族4名の住まいのご依頼を受けました。音楽がある暮らしが豊かで心地よく、リラックスできるように、住宅の室内は無垢オーク材、珪藻土などの自然素材で仕上げられています。ヨーロッパのカフェのように天井は緩やかなヴォールト(曲面)とし、木目の板が心地良い表情と自然な肌触りとなるように植物系オイル仕上としています。扉や家具も自然素材を使っており、建具は把手を彫り込んで指掛りとしています。楽器のように木の肌触りや左官の仕上げの豊かな表情や質感を楽しんでいただきながら、時間が経過した後も愛着を感じれる住まいとしています。2Fの寝室以外はすべて引戸とし、普段は廊下やLDK、小部屋などが一つに繋がり、来客時などは引戸を必要に応じて仕切る設計とし、柔軟性のある空間の繋がりが特徴となっています。断面的には1Fは玄関~ピアノ室までのエントランス空間部分と隣の大きめなLDK空間、洗面脱衣室~浴室・室内物干し部屋が3つのゾーンに分かれており、小さなボールトと大きなボールトの天井の空間が並列に南側に面して横並びに並ぶ構成としています。居室はすべて勾配のある天井又はアールの天井としており、変化のある天井高さが住宅に多様な空間を生み出しています。外壁は昔から瀬戸内沿岸の伝統的な民家で使用されてきた焼杉とし、押縁を設けることで板の伸び縮みを抑え、風雨から室内を保護。自然光が当たると豊かな陰影のある表情が時間帯ごとに現れるように工夫しています。近隣の昔ながらの集落の景観が少しずつ失われつつある中、昔ながらの外壁の素材を使用し、現代的意匠を住宅に用いながら、周辺の住宅地の景観の向上に取り組んでいます。防虫防腐の効果、環境に配慮した外壁とし、長期間持ちが良いように軒は深くし、庭と室内を繋げる深い縁側が庭と連続するように設けられています。南側の縁側の前に適度な広さの自家栽培ができる庭を設けています。室内↔縁側(半屋外)↔庭(屋外)といった流れで、活動の場をA(屋内)非A(屋外)としたときに、屋内と屋外が積極的な活動の場となるように全体の配置計画と外部空間の設計を行っています。住宅は80%以上、県産材の杉を構造部に使用し、地域の森林資源の積極的な活用(循環型社会の構築とCO2の削減)にも貢献しています。(森林環境税活用事業:愛媛県の補助金を活用した住宅になっています。)地元の木を使いながらご家族の健康的な暮らしを目指し、地域の森林資源への貢献にも取り組んだプロジェクトとなっています。 (写真 北村徹)